2014/05/29

大絶賛のロンドン、ウエストエンドのお芝居「1984」は絶対に観て欲しいです。なぜなら、この恐怖はまさに昨今の日本にもあてはまるからです

オフウエストエンドで上演され、大絶賛を浴びていた1984 がウエストエンドのPlayhouse Theatreにトランスファー。相変わらずの大絶賛のため8月までやってます。
チケットはこちら↓
http://www.atgtickets.com/shows/1984/playhouse-theatre/

毎日101枚(笑)ディスカウント販売しています。(チケットの値段自体は20ポンド弱!)円安かつチケットのなんとなくなつりあがりが見える昨今、この安さでこんなすごい舞台を観てしまったことに今や罪悪感です。

アルメイダで上演されていたときのサイトはこちら。
http://www.almeida.co.uk/event/1984we

タイムアウト誌で場面写真が結構掲載されてます。
http://www.timeout.com/london/theatre/1984-3


【1984:ご存知、ジョージ・オーウェル原作のアレです。】
文系を専攻した方は、どこかで必ずぶつかっているのではないでしょうか。ジョージ・オーウェルの1984を舞台化しています。マンガも含め邦訳も沢山出ており、どれがお勧め訳なのか?で、すみません。原書が難しいということは特にないかと思うのですが、マルクス主義や資本主義など社会哲学や政治哲学の知識が英語で入ってないと、もしかしたら読みづらいかもしれないので、今回は原書をおすすめ!といわないでおきます。

一九八四年

あと、テリー・ギリアムの未来世紀ブラジル [Blu-ray] がこの作品にインスパイアされていることで有名ですよね。

【お話は…】
とても簡単に概要できるレベルの物語ではないので、今回鑑賞したお芝居と関連して書きたいと思っている部分に特化させてください。

今私たちが慣れ親しんでいる社会に革命が起き、色々とシステムが変わってしまっている近未来(1984年)にて東アジアと戦争中の”オセアニア”(架空)が舞台ですね。ウインストン・スミスという”真実”省に勤務するお役人さんにスポットをあて、描かれていきます。”真実”省で何をしているかというと、過去の記録の修正です。公的”事実”として認証されてきたことが次々に変わるので、過去の記録を”新事実”どおりに記録しなおさなければいけない。「前はこうやって知られて来たけれど…じつはホニャララだった」ということではなく「(前から)ホニャララだった」とするんですね。
個人的に記録を残すことや、公的な事実やルールにとはことなる感情を持つことは固く禁じられており、見つかると逮捕されて、”消されてしまうとか。実際消えている人は沢山おるのですが、消えた人たちがどんな経緯でどのように消えるのか、どんな目に遭うのか今イチわかりません。漠然とした恐怖と背中合わせななか、ウインストンは日記をつけたりしています。なぜなら、ウインストンは自分が憶えている事実がある日突然なかったことにされていることがどうしても納得いかないから。オセアニアの戦争相手も4年前は東アジアじゃなかったのです。ユーラシアだった。それがある日突然東アジアが戦争相手になっていた…ずっと東アジアと戦っているという事実になっているのです。そしてそれに対して誰もアレ?って思う人はいない。なんとかして後世に伝えられないか、…という気持ちがあるからです。で、結構早々に日記をつけていることがバレちゃいます。どこもかしこも監視カメラ状態のtelescreenがあるから容易いことなんだと思います。
”人を好きになる”という感情も完全にお役所にコントロールされています。お役所は愛とか欲望とかは、世の中の秩序を乱し、戦闘のエネルギーを奪ってしまうものとして、徹底的に排除します。結婚も子づくりもすべて監視のもと。女性の多くは反セックス・リーグに加入しておるんですね。
そんなある日のこと、ひときわガチガチの政府サポーターでウインストンが苦手でしょうがないジュリアという若い女性がですね、ウインストンにメモをコッソリ渡すんです。ウインストンはジュリアがThoughtCriminalを見つけるスパイだと思って、そのメモに超恐怖を憶えるんですが、そのメモに書かれていたのは「I Love You」…ジュリアはじつは忠誠を装った反逆児だったんです。同じ匂いを感じ取り合った2人は密会をはじめますが…。

【お芝居は、インターバルなしのノンストップザ・恐怖!x2時間弱】
前述のとおり、原作は幾重にも重なったテーマが沢山あるせいか、”社会のシステム”とくに”情報社会”の恐怖に焦点をあて、とてもコンパクトかつ観客を絶望のどん底に陥れる恐怖のローラーコースターな展開でした。だから休憩なしの一気に2時間弱全力投球です。(観客は。。。疲労困憊 汗)
この結果的、原作の真髄を抽出した最善の形だったのではないかと思ってます。原作は執筆当時の政治社会的環境を盛り込んでいるので、第2次世界大戦頃のイギリスの物品支給システムやソビエトのスターリン主義をビビッドに彷彿とさせる描写があます。そしてそのせいで、ある特定の政治、社会についても考えさせられる内容になっています。しかし、それよりさらにマクロなレベルでの社会哲学として考えやすい作品になっていました。

具体的にどういうことかというと、我々が生きるこの現代社会に、いかにあてはまる話であるか、ということが響いてくる身の毛もよだつホラー芝居だったということです。それは、例えばスターリン主義やフセイン政権といったわかりやすいTotalianismだけではなく、日本社会も含まれるのです。だって、ウインストンが体験する「事実が塗り替えられる」一つをとってみても、震災以降で考えてもよくある光景じゃないでしょうか。 例えば今まで●●な数値だった上限の、ケタ数がある朝突然変わってしまう。そしてそれをそのまま受け入れる、とか。どれをどのように信じるという選択肢は多少あるにせよ、情報のコントロールがされていることは事実です。コワいのはソレがどれくらいコントロールされているものなのか。どれが本当なのか。”公表”とか”正式”ってどれだけ信頼できるのか… そして、例えば何かをうたがい始めたことが知られたときのリスクは、例えばSNSでの問題沙汰一つとってみても、かなり身近な話であります。

考えれば考えるほどウツです。ええもう、鬱真っ逆さまです。

【ウインストン役のサム・クレインさんが素晴らしかった】
言いたいことから先に言ってしまうと、この芝居でウインストン役をやっているSam Craneさん(→Desperate Romantics/SEXとアートと美しき男たち[PAL][英字幕のみ]のフレッドだった人)の、コテンパンに痛めつけられる瀕死のイケメン希少生物な姿に、すっかりポッとなってしまいましてん。
うわっ、かっこいい!
http://www.imdb.com/media/rm58099968/nm0186424より、お借りしました…)

また、このお芝居でクレインさんは「アレ?ウインストン、もしかしてthought crimeの常習犯?」と推測できるような、斬新な演技をしてくれているんです。もともとウインストンが若くて繊細草食男子イケメン、っていうイメージなのが大胆かつ斬新っちゃー斬新なのかもしれないですが、コレはぜひ、ご鑑賞になって、ご確認してください。ホントに、こういうビョーキすぎて死にそうなインテリイケメンってめっちゃくちゃ魅力的ですよね。とくにクレインさんご本人、ウィキさん情報によると芸能一家のご子息さんで、ご本人オックスフォード大学卒の超名門ドラマスクール卒と、もうドン引きしたくなるくらいの、インテリイケメン俳優さんだったですね。

お宝!お宝発見!

って感じですね。(→不謹慎すぎ。身の毛もよだつホラーとかいった前述の話がまったくウソにきこえてしまいそうです…汗)

ちなみに、この「ウインストンは常習犯だったのかどうか」について、あまりに気になったので、クレインさんご本人にきいてみたところ
「解釈はいかようにも。君はウインストンだよ」と、身の毛もよだつ御丁寧なお返事をいただきまして(恐)はい、もう完全にファンになりました。

というわけで、ぜひ、機会があったらご覧になってください!!(しつこい)

2014/05/17

マイケル・ファスベンダーさんがかぶり物をするビタースイートなセンシティブ映画「Frank(フランク)」のお話を作ったJon Ronsonさんによる制作秘話トーク概要

昨日のツイートの補足です。

映画がどれだけ面白いかの、ちょっとしたツカミにもなるので、アップすることにしました。

【ことのはじまり部分は本当に実話だった!】
Jon Ronsonさんは実録ジャーナリストとかコメディ系の小説、というイメージしかなかったのですが、この人もともと、大学内のライブ会場のブッキングマネージャーだったんですって。それでFRANK SIDEBOTTOMをブッキングしていた、と。ところが、当日「キーボードが倒れたんで、ほかにキーボードを見つけられなかったらライブはキャンセル!」って電話がかかってきた。ドタキャンはこまりますよね。そこでジョンさんは音楽活動もやっていたので「キーボード、僕ひけるけど…」っていってみた。そしたら「オッケー!じゃあ君がやって!」といきなりバンド加入命令(笑)しかしジョンさんはFRANK SIDEBOTTOMの曲を演奏できるどころか何も知りません。
「いや、曲の何一つ知らないから無理なんじゃ…?」と答えると
「Do you know C, F and G?」
とフランク。
「そ、そりゃできるけど…」
「じゃあ、弾いて〜!」

というわけで、FRANK SIDEBOTTOMのキーボードプレーヤーになったんだそうです。ロケーションは異なりますが、ここのやりとりは映画できちんと描かれており、まさかの実話(笑)

ちなみに、FRANKは映画ではかたくなにかたくなにかぶりものをとらないんですけど、実際はもじもじしながらかぶりものをとっていたそうです。

【FRANK制作のいきさつ】
この映画の制作や本の出版の話が、実在のFRANK SIDEBOTTOMの中の人、Chris Cievy さんがガンでおなくなりになった後だったこと、そしてこの制作内容について公開時期まで全然漏れてでてこなかったので、正直「FRANK SIDEBOTTOMのトリビュート」、という意味や「FRANK SIDEBOTTOMをモデルにした架空のお話」という意味が今イチピンときていませんでした。しかし、このトークをきき、すべてはクリス・シーヴィーさんと一緒にずっと考えていたお話だったということが判明。さらにはクリス・シーヴィさんの強い意志により、FRANK SIDEBOTTOMおよびシーヴィーさんのバイオグラフィー的な要素を持たないようにしたんだそうです。故に、かぶり物もするし、モデルではあるんだけど、(ジョンさんの実体験であるつかみ部分をのぞいては)フィクションの世界なんですね。すごく納得できました。お話はFRANKの中身とかぶり物をした表がかなり一心同体となっています。(→リアルはそこまで融合していない)そしてリアルのFRANK SIDEBOTTOMに存在するアーティスト魂を押し拡げて膨らました、っていう感触です。

【ちなみに…】

ジョンさんはほかにもベストセラー作品を沢山執筆している作家さんで、ジョージ・クルーニー、ユアン・マクレガーが出演した
The Men Who Stare at Goats
実録・アメリカ超能力部隊 (文春文庫)
の原作とかも書いてます。
原作の英語はそんなに難易度高くないと思います。ぜひトライしてみてください…!

2014/05/04

ピーター・カパルディさんが12thドクターのため、過去のブログ記事を移動しました→マルコム・タッカーさんとツーショット写真を撮りました。☆The Lady Killers 番外編

(ねんのため☆マルコム・タッカーさん=ピーター・カパルディさん扮する国民的人気のキャラクターです)


2005年からマルコム・タッカーさんを通じてピーター・カパルディさん命と騒いできた1号です。2.5年前にカパルディさんのお芝居を観に行ったときのカパルディさん体験を誰も読まないコメディ・ブログでアップしていました。カパルディさんが12thドクターになり、世界的の注目度が激増したので、日の目をみていなかった記事をこちらに移動し、いかにカパルディさんが素晴らしい、ドクターをやるにふさわしい方なのか、お伝えしたいと思います。(以下は2011年12月の出来事です)

「The Thick of It」でボン◎ラ政治家のボロを隠し、ヘマを人になすりつけ、政府の体面を保つため24時間戦うマルコム・タッカーさんを演じ、カリスマ的人気を誇る英国のトップ俳優、ピーター・カパルディさんを「The Lady Killer」にてナマ鑑賞いたしまして。
 壮絶、この世のものとは思えないほど、あまりにかっこよすぎて、どうしても、どうしても
「ひとめ会って、大ファンだと伝えたい!!!」
という衝動にかられてしまいました。超一匹オオカミで、出待ちをやってしまいました...

(とかいって、劇場に行く前に油性マジックを購入していたのですが 汗 やる気満々。。。)

 正直、女子が出待ちしたくなるような出演者がいないので、出待ちしているファンは少ないだろうな、とある程度覚悟してました。それにしても、ちょっとはいてくれないかな、と願いを込めてですね、公演終了後、裏手にある楽屋前に足を運んだらば。。。。



おじ(い)さん、3人。






以上です。(涙)


ちなみに、
おじ(い)さん3人のうち一人は、アーティスト写にサインをもらってそれを売って商売をしている「その道」の人です…。

これにプラス極東出身の1号です。
ロンドン、ウエストエンドのど真ん中、おしゃれSOHOに面した楽屋出口前にダダ漏れてる空気がどんなものか、容易にご想像できるかと思います。

と はいえ、おじ(い)さんたちはとてもやさしくてですね、私はカパルディさんオンリー狙いだったのですが、ほかの役者さんが出てくると、「ほら、この子のに もサインをしてあげておくれよ」と私のパンフをとりあげてサインを集めてくれまして(汗)「気を弱くしていると、みんなすぐいっちゃうよ」なんてアドバイ スしてくれて(汗)はあ、ありがとうございます。

そんなわけで、もらうつもりじゃなかった、ベン・ミラーのサインがここに。(失礼すぎですみません…)


【そしていよいよ カパルディさんに!!!】
 ほかの役者さんは、歩きか食事をしてから帰るのか、さっさと出てきて徒歩でSOHO地区へ消えていったのですが、カパルディさんはタクシーでお帰りになるとかで、タクシーが到着する30分~1時間後に出てくる、という話。サインを集める業者の人は「そんなに待ってらんないから、となりの劇場へ行ってくる」って行っちゃって(涙)。ただでさえ4人しかいなかった出待ち人数が、3人に。(号泣)

 しかし、ここまできたら引き返せません&おじ(い)さんたちとも仲良くなっちゃったので、全然待てます。
  おじ(い)さんの一人はその日が誕生日とかで、パーティを開いてお友達とパブで飲むよりも、自分のご褒美として大好きなお芝居をたくさん観に来たほうがい い、とマチネではリチャード3世、夜はthe lady killersとハシゴしたんですって。おじ(い)さんのお芝居鑑賞への情熱にしみじみしていたところ、

か、か、か、カパルディさんが!!! 

黒いコートに身を包んで超かっこええ(涙)(*こういう一連のかっこええ姿をご想像ください。ホントこんな感じでした。)

カパルディさんは、出るなり私ら3人に囲まれ、一瞬目が泳ぎました。はい、泳ぎました。しかし、すぐに「サイン?」といって、おじ(い)さんの差し出すパンフとペンをとり、さらさらっとサイン。
そしてガッチガチに硬直しておった私にもにっこりわらってサインペンをとってくれて、「名前は?」って喋ってくれたんですよ~~~~!!!

ぎゃああああああああああああああ!(→脳内爆発)

(ちなみにいただいたサインはこちら)

とにかくファンだと伝えなければと、
「すんごいすんごいすんごいファンなんですっ!!!」
っていいました。
さらに
「The Thick of Itも大好きです! 日本で来年(注:2012年)からついに放送されるんですよ!」って伝えました。
そしたら、カパルディさんは、(やっぱし)日本で放送されることはご存じなく、
「本当? それはすごいな~。翻訳とっても大変だろうね」と!! さーらーに、「日本での放送、楽しみだなあ。」と!!

サインと話ができただけで感無量だったのですが、ワタクシが片手に持ってた携帯をみて、カパルディさんは「写真撮らなくていいの?」(注:待ち人数がゼロに近かったからめぐってきた幸運としかいいようがありません)
 
【というわけで、まさか、まさかの、カパルディさんとの夢のツーショット撮影に!】


が。


そう簡単に願いは達成されません。

出待ちの仲間はおじ(い)さん2人。
そのうちの1人にシャッターを押すのを頼んだのですが、スマホ携帯の使い方がわかんねえ。
何回説明しても、レンズを指でカバーし、画面を親指でぎゅーっと押すんです。

 3回やってもダメで、もう諦めるしかないと思った矢先のことです。
 カパルディさん、なんと、ちょうど楽屋から出てきClive Rowe氏に「ちょっと写真とって」と指令
 (注:Clive Rowe =モスキャラ的存在の役を演じたオリバー賞受賞のあの人です 汗)クライフは「ええつ?オレがなんで?」といわんばかりの不機嫌顔です。(当たり前だっつ~の 汗)
しかし、カパルディさんの指令なので、やるしかありません。というか、返事をする前に、カパルディさんから(私の)携帯を渡されて、撮影カメラマンになるしか道がない状況です。
 (ちなみに、あえて客観的にみた私を説明するならば、欧米の演劇界にすかしべをふっかけといて、「やったのは私じゃありませんよ」と知らん顔しているような感じだと思います。。。)

そんなわけで、芝居の人気をかっさらったオリバー賞受賞俳優を使いっぱにして撮影したタッカーさんとのツーショットはこちら。

photo: C.ロウ。。。


ツーショット撮影無事終了後も、にっこり笑顔で「ありがとうね~。じゃあね~」とタクシーに乗り込むまでにこやかに応えてくれたカパルディさん。
ホントに、むちゃくちゃ腰が低くてフレンドリーで、とってもファンに優しくて、ホントにホントに最高です!
もう死ぬまで大ファン。いや、死んだ後も、日本一のファンでい続けます地球最大級に愛を捧げます

2014/05/03

ディハーンさん&ラドクリフさん共演のキル・ユア・ダーリング/Kill Your Darlingsは、せつないロマンス映画以上の、知的映画です!

何しろ信仰宗教がパンクなものですから、ビート・ジェネレーションときけばマスト視聴になります。が!トホホな事情で英国公開当時に観のがしてしまい、今に至りました…。


キル・ユア・ダーリン [DVD]

(ちなみにこのキャッチ・コピーは、ちょっと映画の焦点とずれてると思ってます…。)

もうみなさん字幕付きで御視聴可能ですが、トレイラーもはっつけときます。

【お話は…】
ご説明するまでもなく、20世紀のアメリカ文学を語る上で必要不可欠なビート・ジェネレーションの初期メンバーの面々の出会い、活動、そして彼らの関係について描いているわけですね。

【せつないロマンス映画に、ビート・ジェネレーションの哲学が盛り込まれ、わかりやすくまとめられている】
メロドラマなのかな、とちょっと不安をかかえてたせいか、正直、かなり、驚きました。ビート・ジェネレーションについては、「ワールズ・エンド〜酔っぱらいが〜」のサントラのウンチクくらい簡単にはまとめられそうもない話じゃないですか。一方この結成時の話や彼らの関係は、のちに「Naked Lunch(ウイリアム・バロウズ)裸のランチ (河出文庫) 」「On the Road(ジャック・ケルアック)オン・ザ・ロード (河出文庫) 」「Howl(アレン・ギンズバーグ)ギンズバーグ詩集 」など絶対に死ぬまでに読んでおきたい異色の名作へと繋がっていく肝のところなわけですよね。そこがきちんと描かれている。何にうんざりしていたのか、何をやろうとしていたのか、何に影響を与えられたのか、何を生み出したのか…例えばですね、しょっぱなの図書館シーンでルー(→ディハーンさん)が、米国では60年代になっても性的表現がキツすぎると禁断だったヘンリー・ミラーの34年作「北回帰線北回帰線 (ヘンリー・ミラー・コレクション) 」からの引用をし、またそこが、アレン(→ラドクリフさん)とのビビビな出会い(→死語 汗)とかけている。
無駄がありません。

 またこちらも比較的冒頭の、授業中の教授とアレンとのやりとり。"Rhyme, meter, conceit. Without this balance, a poem becomes slack, sloppy. An untucked shirt."
 詩には韻律がなければ、だらしがなくなる。と講義する教授に韻律が嫌いだったホイットマンは?とアレンがツッコミ。さらに詩人である父親が韻律を使う理由は(そうすると)簡単だから、と。対して教授が「創造は模倣から始まる」とピシャリと言い捨てるわけです。冒険せず、習慣/慣習/社会の風潮にならい、流れのままに生きることを常とする米社会vs そんなのクソクラエだぜ、なパンク精神(ルーたち)の図式が見えるわけです。そして時代がら、この図式が本作のせつないロマンスにも通じている…。ビート・ジェネレーションの説明を大変魅力的に、無駄なくわかりやすく描いていると、ちっと感動してしまったわけです。


【敏腕編集者と踊らされるライターの力関係がよくわかる作品】
 こ、こちらは、超備考です。編集者さんは、ワテクシのような、たとえどんなに売れないヘボいライターも、持ち上げてくれるんです。自分の欲しいブツ(→原稿)を手にいれるために、すごく気を使ってくださいます。んで、なかには、仕事が終ると、あんたみたいなカスにつきあってる暇はないわ、って態度で示す方もいらっさるわけです。この頃のルーはまだ編集者じゃなかったわけですが、もう完全に立ち位置が編集者ですよね。ライターが必要なんだ、イイモノ書いてもってこい。って才能あるライター、アレンを上手に転がす感じ。アレンが手段を選ばす頑張って出来上がった詩を持ってって、ジャックがThat was beautiful, kid. ルーが You wrote that? んで、アレンがYou asked me to. ぶっは〜〜〜!! うーん。共感!(違)

【脇の俳優陣について特記したいこと】
アレンのお父さん役を演じるのがDavid Crossだったのを認識した冒頭で、私はこの作品はオサレだ、と思いました。デヴィッド・クロスは米の芸人さんであり、作家さん、転じて俳優さん、なのですが、活動が主流と別を行くエッジでパンクさで有名なのです。(ちなみにTVは(伝説の)ベン・スティラー・ショーに作家として参加したのがデビュー戦。)そして6人の俳優がボブ・ディランを演じて話題となったアイム・ノット・ゼア [DVD] 憶えてらっしゃいますでしょうか? あそこで、アレン・ギンズバーグ役を演じたのがほかでもない、デヴィッドなんですよね。なのでこの配役、ホントオサレだと思うんです!

もうひとり、ルーと”特別”な関係にあるDカマラー役が「デクスター」のマイケル・C・ホール。微妙に役がぶってて、コレもオサレって思っちゃったのですが、ココは個人差があるかもしれません…汗

そんなわけで、この作品、ホント面白かったと思います!