2013/11/10

R.グリント、B.ウイショー、C.モーガン他出演のロンドン、ウエストエンドお芝居「Mojo」観ました

【はじめに:マチネを観に行ったので、バックステージドアでのファンサービスはありません。よって画像的にご期待にそえる内容ではありません。よろしくご勘弁ください。G1号より】



奇才Jez Butterworth/ジェズ・バタワースが最初に奇才っぷりを認められた出世作「Mojo」。1995年ロイヤルコートシアターで上演した際には、トム・ホランダー、アンディ・サーキス、エイダン・ギレンと、個性派の実力派俳優が舞台にたち、オリヴィエ賞、イヴニング・スタンダード賞などメジャーな賞を総なめしている名作ですね。映画化もされたので、GG2Eをご愛用くださるGeekなエンタメファンの方々には、なじみのある作品ではないでしょうか?
と思ったら!(汗)現在、ゲット不可能ですか?!こ、コレは失礼しました(汗)…ええと、YOUTUBEで全編視聴可能のようです。また、ブートで売買されているようです。(一応リンクははらないでおきますが、よいことのような気はしています…。)

その名作が今をときめく若手人気俳優たちによって再びロンドンのシアターシーンに蘇っております。プレビュー期間中は良席もおトクなお値段なので、万年エンタメ金欠な1号はこのときを狙い、行って参りました。以下は、作家の脚本が好きな1号からみた私的感想です。

【パンフ内の写真はモノクロでこんな感じ…】


【一応おさらい。Mojoのお話は…】
エルヴィス、チャック・ベリー、バディ・ホーリーなどのアメリカ発ロックンロール旋風に煽動され、イギリス発のロックンロールシーンがフツフツと沸騰しつつある1950年代終わりのロンドン、SOHO。クラブ・アトランティックのレジデント・アーティスト、シルヴァー・ジョニーの人気がクラブシーンで急沸騰し、アトランティックには彼をみたいと毎日長蛇の行列。ドル箱ならぬポンド箱スターの素質を持つ金の卵を前に、SOHOの権力者たちが目の色を変えて注目している…という設定になっています。幕開けはアトランティックの2階事務所で、クラブのオーナー、エズラがシルヴァー・ジョニーのことで密談中という状況。その部屋越しに、雇用人のポッツとスウィートがあーだこーだとどうでもいい話をしながら部屋の向こう側を推測するシーンからスタートします。

【登場人物紹介】
ポッツ:(ダニエル・メイ) クラブの雇用人。いわゆる雑務全般をやっています。非常におしゃべりです。あることないことペラペラしゃべります。タランティーノ監督の「レザボア・ドッグス」のMr.ピンクくらいよくしゃべります。
スウィート:(ルパート・グリント) クラブの雇用人。こちらも雑務全般。ポッツとスゥイートは、Sベケットの「ゴドーを待ちながら」のウラディミールとエストラゴンを彷彿とさせるキャラクターかと思います。とくにスウィートはこの芝居で一番のボケ役かと思います。本作がブラックコメディとして光るために、かなり責任大な役柄だと思います。
ミッキー:(ブレンダン・コイル) クラブ・アトランティックのマネージャー。
スキニー: (コリン・モーガン) クラブの雇用人。マネージャーのミッキーに贔屓にされている様子。すくなくともポッツとスウィートはジェラシーを感じています。そして、それが理由かどうかは?ですが、ベイビーから嫌がらせをうけているようです。
ベイビー: (ベン・ウィショー) クラブのオーナー、エズラの息子。サイコパス(ちょっとイッちゃってる)です。SHERLOCKのモリアーティのようなカワコワ系です。
シルヴァー・ジョニー:トム・リース・ハリス 今注目のロックン・ローラー。エズラにとっての金の卵であり、ギャングのボス、ロスがツバを付けようとしているミュージシャンです。
(エズラやロスは、物語の重要な登場人物ですが、芝居では実際には登場しません)

[英語的なメモ】ロンドン、SOHOのクラブ経営やギャング …なので、下町ロンドンアクセントが効いている英語になります。具体的にはみなさんTHをFで発音します。聞き慣れてないと、結構何を言ってるのかわかりずらいかと個人的には思っています。本作を観に行かれる方は、例えばガイ・リッチー監督の「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ/スナッチ [Blu-ray] 」を視聴するなど、ロンドン下町英語のシャワーを浴びて自主トレしておいたほうがよいかもしれないです。 

【個人的な見どころ】
 なんといっても作家のファンなので、作家の魅力がきちんと味われば万々歳です。ではその作家、ジェズ・バタワースの魅力とは何かといえば、主に2点です。
1「平穏かつナンセンスな世界に妙に不穏で不吉な空気がまぎれこんでいて、潜在的な緊迫状態が続くなか、突如 どっかーん!と爆弾がはじけとび、とんでもない事態になっている」です。90年代のシアトル、オルタナ・ロック音のような、突然やってくるエネルギーの爆発系な世界です。
2. 笑っている場合ではない、戦慄かつ残酷極まりないその瞬間にぶはっ、と吹き出さずにはいられないマヌケなセリフの発射。どうしようもないほどにリアルな反応であり、かつ、笑わずにはいられない。この究極の悲劇と喜劇が同じ瞬間に共存する。この奇跡の共存を、同作家の脚本&マーク・ライアンス主演「Jerusalem/イエルサレム」で体験してしまったため、同様の経験を期待せずにはいられないのです。

【感想】 
ゴリゴリとした、硬派でワーキング・クラスなオトコの表現、様々な解釈ができる漠然とした表現も沢山盛り込まれた脚本です。役者のせりふまわしでいかようにも調理できる。  極上の食材、そのままかじってむしゃむしゃしてもおいしい食材を、この才能溢れる人気の役者さんたちがよってたかって作ってくれた料理はどれだけおいしかったのか?そんな観点からの感想です。

ルパート・グリント君
ルパート・グリント君はこれが初舞台ということですが、やはり鍛え方が違うのですね。きちんとコブシがきいた「ボケ」を作り出していました。(スウィートは中でも一番のボケ役だと思います。)たとえば、すぐワタワタするので(心を落ち着けるために)あったかいミルクが必要だ、というセリフがきちんとRunning gag(繰り返し登場するお約束ギャグ)に聞こえたり。
ほかにもエズラが殺されたと知らせを受けたときの状況をミッキーが説明する際。エズラの殺され方が”まっぷたつに切られて、ゴミ箱に捨てられた”なので、戦慄と緊迫の空気が蔓延しているんです。しかし、スウィート(ルパート君)が絶妙のタイミングで「Are you sure?」とボケる。 文字にすると伝わっていない気分100%なんですが、ココで会場がぶっと吹き出してしまうんです…。
また、修羅場をみて飛んで逃げていき、一番見えないところに隠れちゃうにも関わらず、一番存在感があるというのは、「ロン(ハリー・ポッター・シリーズ)」で鍛え上げた彼の得意技だからかもしれないですよね。

コリン・モーガン君
「魔術師マーリン」のマーリンでおなじみのコリン・モーガン扮するスキニーは、サイコなベイビーとの一番の修羅場で対面し、その修羅場で芝居を壊すことなくユーモアを見せなければならない非常に難しい役柄だと思うのです。そこでコリン君は、観客が心打たれる(そして思わずブッと吹き出してしまう)スキニーを演じてくれていました。いい仕事してくれてます!「Mojo」がブラック・コメディとして正しいトーンになるための切り盛りをしてくれていた気がします。舞台俳優としての技量に感動してしまいました。(よって、モタモタしていてチケットがとれず見損ねた、コリン君のグローブ座でのTempestが、改めて悔やまれてなりません…) 

 ベイビーにいつもタマをぎゅっと握られる。セクシャルな意味ではなくやるから…痛いんだ。もう絶対こんな店やめてやる。オレだって子どもがいつか欲しいと思うかもしれねえんだぜ”と。この”I might want to have children one day"というセリフ。コレも、実際に彼が喋るとぶっと笑える。とくにクライマックスは、高いお金(プレビュー値段だけど!!汗)を出して見に来てよかった〜と思えました、はい。

ベン・ウィショー君(さん?)
観客が不穏な緊迫感の連続、そして壮絶かつ息を飲むほどの戦慄をヴィヴィッドに感じられるのは、ベイビーのサイケだと思っています。父親が死んでも、涙一つこぼさない。人情のある凡人だったらまず勇気のでないことを、平常心でいとも簡単にやってしまう。そして、そのサイケな言動には、少年期の残虐で暗い過去、そして不満や憤りが潜んでいる… そんな病んだ闇を体現しなければいけない。非常に複雑で難しい。そしてバタワース好きの醍醐味を生み出す役柄だと思います。

1号が観劇した回では、正直そのサイケなパワー、怒りや不満といった負のパワーがマックス・レベルまで出ていない印象を受けました。ウィショー君の表現の仕方とこちらの期待したものが単純に違ったのかもしれませんし、単純にウィショー君は調整中だったのかもしれません(何しろプレビュー期間中ですから!)

【余談ですが…】
 あくまで個人的にですが、ウィショー君といえば
●Bカンバーバッチさんもちょっとだけ出演していた番組「Nathan Barley: Series 1 [DVD] 」で、いつも主人公にいじめられていたITオタクのピングー
●ずば抜けた嗅覚を持って香水を作る(女性を殺して、ですが 汗)映画「パフューム ある人殺しの物語 [Blu-ray] 」のグルヌイユ
「普段友人宅にお呼ばれにいっても、その場にいる人々がウィショー君の存在に気づかないまま数時間過ぎてしまう」というほど”存在を消す”のが得意なウィショー君(素の本人)

… そんな彼が、セリフ一つ吐かずに劇場内で強烈な存在感を出すベイビーを演る?!どんなベイビーになるのだろう? と、無駄にヘンな期待をしたかもしれないです。
(あくまで1号が観た回、ということですので、ご了承ください)

ちなみに「Nathan Barley」 で主人公ネイサンに毎回いじめられるITオタク(というかアニメ−ション制作)ピングー役のウィショー君はYOU TUBEでもお楽しみいただけます。


(第1話では電気ショックでいじめられて、ズボンが落ちてグンゼパンツみたいんのが見えます…あの、マジでシャレにならないくらいかわいそうなんです…だからタイムコードは割愛します…ホントにかわいそうなんです(涙)

【まとめ】
なんだかんだ言ってますが、かっこいい英国俳優さんたちによる名作をナマで観れるというのはすばらしきことだと思います。チラホラでしたが残席はあるようですので、もし機会がありましたらぜひ観てみてください。

あ!ちなみに、ミッキー役のブレンダン・コイル氏は当然素晴らしいミッキーでしたよ! そしてポッツ役のダニエル・メイに関してはもにょもにょしちゃうので、スルーさせてください。(こちらもワタシが見た回、ということでご了承ください。)
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