2014/10/11

北アイルランド問題を基盤に描く、アクション・スリラー&注目若手英俳優ジャック・オコンネルさんの新作「'71」観ました!

急性オコンネル病が発病しています。応急処置として、本日は2014年10月10日金曜日よりUK公開となりました '71を観に行って来ました。


【オコンネル病とは】
英国俳優ジャック・オコンネルさんのTVドラマ活躍時代に、そのドラマを観ていながらもほぼ認知できていないという特殊な体質の人間がかかる病気です。


事例を上げると、オコンネルさんの活躍作「This Is England [DVD] [2006] 」(*1)は監督シェーン・メドウズ目的で観賞、「Skins - Complete Series 1-7 [DVD] 」(*2)はS1-2の作家さんとクリエイターさんの作る世界にハマっていたせいで、テイストと世界の違うS3以降は2話程度で脱落。映画「Harry Brown [DVD] [2009] 」はマイケル・ケインさん目的で観賞しました。そんなわけで、オコンネル免疫ができていないんです。
こういうイメージや

こういうイメージがない。
(以上Rotten Tomatoesさんのサイトで発見しました。外にもいっぱいあるので、よろしかったらクリックしてください http://www.rottentomatoes.com/celebrity/jack-oconnell/

それは、予防接種をしていないということなのです。病気にかかってください!って頼んでいるようなものです。

というわけで、いきなりこういうものがスクリーンに飛び込むと、
(上記のスチール画像の元、Starred Up のトレイラーはこちら→ http://youtu.be/C4iseCjFnWk )

潜伏期間をおいて、いきなり発病します。

【対処法】
予防接種をしていなかったので、特効薬はありません。菌ではなくてウイルス性のものなので、自然治癒しかありません。とりあえず、症状を抑えるために、鎮痛剤を服用します。その鎮痛剤が今回の「'71」です。

長い前置きにおつきあいくださいまして、ありがとうございました。

いよいよ「'71」の紹介と感想をのべたいと思います。

【'71とは…】
イギリスで、このポスター画像と'71とみた人は「コレは北アイルランドでおきた英国軍が武装していない市民を襲撃したBloody Sunday事件がらみだな」とわかります。ご存知のとおりこの北アイルランド問題はピンポイント単発な話ではないですし、この問題を象徴するピーク的なBloody Sundayが起きたのは72年なのですが、まったく別の名作映画「Sunday Bloody Sunday」がおりしも71年に公開&あちこちで映画賞を受賞し大変有名となったため、71年=Bloody Sundayという印象がある気がします。そうした心理を巧みに使いこなしたタイトルなのではないでしょうか。

【お話は…】
ダービー出身の兵士ギャリーが所属する軍隊が、北アイルランドのベルファストで任務を遂行することになります。現場とは、英国軍、そして英国との連合維持を支持する北アイルランド政府による制圧や差別を受け、彼らを目の敵にするカトリック教のナショナリストたちが活発な活動を続ける住宅街。武装してない一般市民(女性子ども)の前で銃を構えなければならない。その間、連合軍が家宅捜査に入り、彼らを見つけて殴る蹴るのフルボッコです。その様子を目の当たりにした市民たちの攻撃がエスカレートし、暴動に。ギャリーはその最中に巻き込まれ、真横で仲間の兵士を銃殺されてしまいます。執拗に追いかけてくるナショナリストたちから逃れる間に、軍隊はその場を引き上げており、ギャリーは現場に1人取り残されてしまい…。

【感想】
ジャック・オコンネルさんファン世代/Skinsのファン世代は90年代生まれで北アイルランド問題IRAテロ問題など肌で感じていない世代だと思うんですよね。その人たちがスルッと理解して、作品に入り込める作品だったと思います。ほぼ冒頭、任務を通達されるときにギャリーたちが動揺し、隊長さんが「大丈夫、(海を越えたところで)ベルファストは英国なんだから。何も心配することはない」といったことを言うんです。これと、ギャリーたちに現場状況を説明するシーンがあるんですが、地図を出してどこがカトリック地域でどこがプロテスタント地域かビジュアルで見せてくれる。この2つで非常にクリアに当時の状況を把握できるんですよね。素晴らしい技術と思いました。
そして宗教そして政治的要素は、アクション/スリラーなストーリーを作る上での基盤として使用されており、北アイルランド問題自体に関するメッセージ色は薄めだったと感じます。当時の北アイルランドの複雑な関係がギャリーが置かされた状況を複雑にし、誰がアンダーカバーで、誰がナショナリストで誰が連合支持者なのか、2転3転させるのです。

(20年代のアイルランドの頃の話ですが)「麦の穂をゆらす風」や、(90年代のIRAのテロ活動ですが)「シャドウ・ダンサー」など今までこの問題を題材にしたものは、英国軍/連合軍に虐げられた環境と(様々な形で)戦うカトリックの人々の、苦悩を描く作品が多かったと思います。一方「'71」では、両方の立場を冷静に見つめた上での描写、かつ英国の兵士の視点で描かれている、という点で興味深かったです。この問題をテーマにして「ぎゃあ!コレ以上オコンネルさんを傷つけるシーンは無理です!」と兵士に肩入れするとか、新鮮でした…(→オコンネル病のせいかもしれません)

ハンディカム使用の息もつかせぬ激リアルなアクションシーン(注:激ブレです)、ときには目と耳を覆わずにいられない過酷で痛いシーン、ハードボイルドでした。レビューのキャッチだとNail-bitingとか表現されていますね。

ちなみに監督さんはChannel 4の話題作「Top Boy」の監督さん、脚本はスコットランド出身のグレゴリー・バークさん。

【備考】ダービー出身というオコンネルさんは映画でもダービー出身という設定になってました。

(*1)この映画は、監督の経験に基づいた、戦後イングランドの「ネオナチズム」の問題と矛盾の断片が赤裸裸に描かれているという点で、非常におすすめな一本です。
(*2)「Skins」はそれまで「ビバリーヒルズ90210」や「ビバリーヒルズ90210」など、高校生たちをめぐるドラマはアメリカの専売特許とまかせっきりだったイギリスのドラマ史上、数字だけではなくポップカルチャー史において快挙をなしとげたともいえる、超ビタースイート青春ドラマです。


2014/10/09

デヴィッド・フィンチャー監督ロザムンド・パイクさんxベン・アフレックさんxNPハリスさんの「ゴーン・ガール」Gone Girl観ました!


あーびっくりした!ググっても英語の情報しか出てこないから日本公開が未定なのかと焦りましたが、2014年12月12日より公開ですね! 上映時間がちょっと長いのが問題ですが、そこを除けば超超超おすすめです!

https://www.youtube.com/watch?v=Lq8gGN3eeUI



同名の全米ベストセラー小説が原作で、原作者が映画の脚本も書いてしゃいますね。原作のwikiさん情報を読む限りでは、ロザムンド・パイクさん扮するエイミーのキャラクター設定が違う気がしますが、実際に本を読んでいないので、信用しないでください。。。

【お話は…】結婚して5年の夫婦ニックとエイミー。5周年アニバーサリーの日、ニックは自分が双子の姉マーゴと共同経営するバーで、マーゴにぶちぶちと結婚の愚痴。すでに5周年を祝うほどロマンティックな夫婦仲ではないことが伺えます。とはいえ、記念日をお祝いすることに変わりはない上に、近所から「オタクのにゃんこが家から出てるよ」みたいなお知らせが携帯に入ってきた(んじゃないかと)というわけで、ニックは家に帰るわけです。家の前を歩くにゃんこをかかえ、お向かいのおうちに挨拶をし、家の中へ入るニック。が!エイミーがいない。リビングに置いてあったガラスのテーブルが粉々に破壊され、アイロンもスイッチがついたまま。

こ、コレは…「ちょっと出かけた」とは違うんじゃないか…?(汗)

ニックは警察に電話をし、警察は即やってきて事情調査に入ります。そしてエイミーの笑顔が飾ってある写真立てとAmazing Amyという人気童話シリーズのポスターをみた警察は「あら!エイミーってAmazing Amyのことだったの?!」と。そう、エイミーはAmazing Amyシリーズを描く両親の原案者でありモデルだったのです。エイミーがストーリーになりやすい人物だったからかどうかは観る人それぞれの解釈によりますが、そんなわけで、早々にエイミーの失踪は犯罪事件の可能性が高いとして記者会見され、捜査が始まりますが…

【感想】
あのですね、配給会社さんから「ジャンルをバラすな!」って怒られちゃうかもしれないですが…

緊迫のミステリー →(転じて)ブハっと吹き出さずにはいられないブラックコメディ→(転じて)泣く子も黙るブラックコメディ

ですわ。フィンチャーせんせいお得意の社会派なスリラー映画なのかと思ったら、先進国家庭ではおなじみのdysfunctional family 、メディア社会、とくに報道をめぐる虚像虚栄の世界を痛烈に皮肉っているフィンチャーせんせいお得意の社会派なザッツ!エンタテイメント!!な映画でした。こんなにブラックコメディだとは思わなかったです。例をあげてしまうと、この映画の2転3転するミステリーの部分や緊迫、それから登場人物の攻防戦がネタバレになってしまうので、全部口チャックしたいと思います。ホントにフィンチャーせんせいって重めのテーマで痛烈なこと描いてるのにエンタテイメントな映画作るの天下一品だと思います。ビッグバジェット映画ってこういうことをいうのよね!って思っちゃうわけです。
今絶好調なロザムンド・パイクさんも今あんな感じのキャリアとイメージなベン・アフレックさんも「だからこそ!」な適役で、すごくシンクロしてた気がします。ニール・パトリック・ハリスさんの出番と役柄もすごいスパイス効いてた(爆)言っちゃうとスポイルしちゃうので、言えないのが辛いですが!

というわけでぜひおすすめです。どうぞ観に行ってくださいー!